ポジティブ・インパクト・ファイナンスについて
岐阜信用金庫は、はなの木薬局グループ(以下、同グループという)に対してポジティブインパクトファイナンス(以下、「PIF」)を実施するにあたって、同グループの事業活動が環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブインパクトおよびネガティブインパクト)を分析・評価した。
この分析・評価は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱したPIF原則およびPIF実施ガイド(モデル・フレームワーク)、ESG金融ハイレベル・パネルにおいてポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、岐阜信用金庫が開発した評価体系に基づいている。
1.事業概要
同グループは岐阜県中津川市に本社を構える株式会社ヘリックスケアファーマ(以下、ヘリックスケアファーマという)を中心に、岐阜県、石川県、富山県、長野県に健康相談のできる調剤薬局を展開し、地域の医療、住民の健康を支えており、また関連会社の株式会社アルセ(以下、アルセという)ではエイジングケアサロンを、株式会社エラーブル(以下、エラーブルという)では石川県、東京都を中心に訪問介護事業を展開している。
事業内容
同グループは主力事業として岐阜県、石川県、富山県、長野県に調剤薬局11店舗を展開し、地域包括ケアシステムの一員として地域住民の健康と福祉を支えている。
DX・ICTなど医療分野においてもデジタル化が進展する中、同グループではスタッフと患者一人一人のコミュニケーションを大切にし、信頼関係を構築したうえでの相談対応を通じて記憶に残り、そのまちになくてはならない存在となることを目指している。
同グループでは健康相談のできる調剤薬局を志向し、処方箋にもとづく医薬品調剤に加えて、OTC医薬品1やサプリメント、衛生材料、メディカルハーブ、アロマ等の選定助言、販売等への対応や、処方医や施設スタッフ等、他職種と連携した施設調剤、訪問薬剤管理指導を通じた患者自宅等での健康管理支援にも対応している。
様々な資格を持った従業員がプロ集団として対応することで、「医療」「介護」ではなく、「美容」「健康」をテーマに多くの人がいきいきと生活できる環境づくりに貢献している。
同グループでは患者一人一人との健康相談、ヒアリングに特に力を入れており、患者の状態にあわせた対応により、服薬による健康改善のみでなく食生活等を含め患者自らの自身の疾患に対する意識改革を促している。 |
金沢市内に一ヶ所、富山市内に一ヶ所、岐阜県中津川市内に一ヶ所と三ヶ所の無菌調剤室を設置することで、展開しているエリア全てにおいて終末期の患者など、より多くの患者に対応できる調剤環境を整備している。 |
医療事業者、介護事業者など他職種と連携し、患者の自宅等へ訪問しての薬剤管理指導等のサービス提供を通じて地域における多様な健康・福祉の増進ニーズへ応えている。 |
また、地域イベントにおいて健康に関する講演や健康チェック等を開催し、地域住民の健康福祉の増進への意識醸成に積極的に取り組んでいる。 |
同グループでは定期的に地域イベントに協力し、健康に関する講演や健康チェック等を実施することで地域住民の健康福祉の増進への意識醸成を図っている。 |
アルセでは、顧客一人一人の美しさを引き出し、身体の内側からケアし、病気にならない身体づくりを提供する【エイジングケアサロン】をコンセプトとするトータルビューティーサロンを2店舗運営し、「美容と健康」の観点より患者の健康意識の増進を図っている。
同グループが運営するサロンアルセでは、より美しくなりたい、若々しくいたいという想いの実現のためには「健康である」いうことが大前提であるとの考えのもと、顧客一人一人の美しさを引き出し、身体の内側からケアし、病気にならない身体づくりを支えるエイジングケアを提供している。 |
同サロンではオーダーメイドフェイシャルエステ、痛くない脱毛、精油を使用したアロママッサージといったエステメニューに加え、薬剤師が調合したオリジナルハーブティーの販売、医薬品登録販売者が在籍し、サプリメント、医薬品の販売を取り揃えるサロンとして、外見の美しさと内面の健康、癒しを提供し、食生活の基本と病気にならない身体づくりを丁寧にアドバイスしている。
エラーブル、では石川県金沢市、東京都江東区を主要営業エリアとし、訪問看護、訪問リハビリ事業を展開しており、老人ホーム紹介事業所も運営することで地域住民の健康福祉の増進に貢献している。
同社では看護師、理学療法士、作業療法士の専門職員集団により、訪問看護・リハビリで地域住民が「住み慣れ親しんできた自宅」で、「住み慣れた家族と」よりよく過ごしていただくための訪問看護、訪問リハビリを心がけサービスを提供しており、また金沢エリアにおいては「精神特化看護師」が在籍し、統合失調症を含む精神疾患を持った患者への対応も可能としている。
同グループが運営する訪問介護リハビリステーションでは「自立支援」をコンセプトととし、利用者ができるだけ自立して生活できるサービスを行っており、また職員同士でも自身が「できる、できない」の判断をしっかりと行うことで、互いに実力を発揮できる箇所を明確に、互いにサポートしつつも自立した業務を行っている。 |
医療・介護保険・自立支援医療などを利用しながら、幅広い年齢層の患者が利用できるサービス展開を通じて地域における安心した快適な生活を支援している。
2.サステナビリティ
(1) 社会貢献に資する取り組み
同グループでは健康相談のできる調剤薬局を岐阜県、石川県、富山県、長野県に展開し、調剤薬局事業を主軸としながら地域における健康・福祉の増進に貢献している。
具体的取り組み内容は以下の通りである。
【地域包括ケアシステムを構成する調剤薬局としての健康福祉増進への貢献】
- 地域医療機関と連携した調剤薬局事業の展開や地域医療に関する地域ケア会議や地域担当者会議に参画することで地域医療体制の構築に貢献している。
- 処方医や施設スタッフ等、他職種と連携した施設調剤や在宅医療支援を展開することで訪問薬剤管理指導に取り組み、薬剤師が服薬指導や管理を実施することで、薬に関する問題を解決し、在宅医療体制構築に貢献している。さらに、正しい服薬を実践することで飲み忘れ防止等による未使用による薬品の廃棄を防ぎ、医療費抑制に貢献している。
【健康相談のできる調剤薬局を主軸とした地域健康福祉増進への貢献】
患者一人一人との健康相談、ヒアリングを通じたOTC医薬品やサプリメント、衛生材料、メディカルハーブ、アロマ等の選定について助言し、症状に適するものを販売している。
地域イベント等における健康に関する講演や健康チェック等を開催し、未病や予防に関する知識を広めることで、過度に薬に依存しない生活づくりに貢献している。
エイジングケアサロンや訪問看護、訪問リハビリ事業展開を通じて、それぞれの症状に合うサービスが受けられる体制により、健やかに暮らしやすい地域の実現に貢献している。
【アンチエイジングをテーマにした事業展開】- 調剤薬局としての「薬」による病気への対応に留まらず、多くの人が未病や予防によりいきいきと生活するために、エステティックサロン事業や化粧品販売などの事業を展開している。さらに、発酵食品の販売による「腸活」や食育など、日常生活の改善に貢献している。
(2) 環境保全に資する取り組み
同グループでは自社の事業活動が地域社会および地域環境に与える影響を鑑み、継続的な環境保全への取り組みを通じて事業展開と環境保護の両立を図っている。
具体的な取り組み内容は下記の通りである。
【適切な薬剤管理による薬剤ロス低減への取り組み】
- 薬剤処方に加え、施設の薬剤管理をコーディネートし医療廃棄物の抑制に努めている。
- 訪問薬剤管理を含めた患者ヒアリングに基づき、患者の実情に合わせたくすりの調整を通じて飲み忘れを防止し、廃棄となる薬剤の抑制に努めている。
- 患者一人一人の状況にあわせた服用方法の変更、飲みやすいサイズへ薬を砕くなどの薬剤加工や、一回の服用に必要な薬剤をパッキングする一包化等の工夫により、継続的に服用しやすい処方とすることでの廃棄となる薬剤の抑制、社内薬剤在庫ロスの低減に努めている。
- 患者、医療機関とコミュニケーションを密に取りながら、患者の服薬状況等に係る情報提供書の提出にも積極的に取り組み、効率的、効果的な薬剤服用への提案を図ることで社会全体としての薬剤ロス低減を推進している。
【薬剤のプロによる助言】
- 薬の副作用を理解した薬剤師が正しくカウンセリングを実施することで、症状に合わせた適正な服薬を進め、減薬への取り組みを実施している。
(3) 社員のモチベーション向上と人材育成に資する取り組み
同グループでは個々の従業員がやりがいを持って健康に働き続けられる会社を目指し取り組んでいる。
具体的な取り組み内容は下記の通りである。
【従業員のスキルアップ、モチベーション向上に向けた取り組み】
- 新入社員については独自カリキュラムによる新入社員研修を通じて、企業理念、社会人としての基礎知識、薬局業務に関する法令、制度、業務概要等を一貫して学べる体制を整備している。
- 定期的な社内研修、社外研修への参加を通じて企業理念および医療人としての自覚を再認識する機会を創出するとともに、実務に従事してからの更なるスキル習得に励むことの出来る環境を整備している。
- 医薬品メーカー等の開催する展示会や勉強会に積極的に従業員を派遣し、従業員の関心に応じて最先端の業界知識に触れる機会を創出している。
- グループ内の本業に係るスキルのみでなく、デジタル関連等をはじめ時代の変遷にあわせた従業員の多様なスキル習得機会の創出、リスキリング機会の創出に努め、入社後においても新たなスキル習得に自発的に取り組むことのできる環境を整備している。
- 社内交流会を通じた従業員間のコミュニケーション促進に加え、地域において連携する他業種との交流を推進し、働きやすい職場づくりに努めることで従業員が安心して長く働き続けられる職場環境づくりに努めている。
3. インパクトの特定
バリューチェーン分析
インパクトの特定のため、同グループ主力事業についてバリューチェーン分析を実施した。
同グループでは地域医療機関をはじめ、様々な関係機関と連携する体制のもと、出店エリア地域住民へ医薬品、医療用具、介護用品等を販売する調剤薬局事業を展開している。
岐阜県、富山県、石川県、長野県に11店舗を展開する調剤薬局事業では、患者一人一人との健康相談、ヒアリングを重視した接客体制、ヒアリングにもとづく調剤の工夫が同グループの強みとなっており、また他職種と連携の上で施設調剤や訪問薬剤管理指導を通じた患者自宅等での健康管理支援も実施し、地域における医薬品の安定提供、健康福祉の増進へと貢献している。
また、エイジングケアサロン事業では石川県、富山県に2店舗を出店し、顧客一人一人の美しさを引き出し、身体の内側からケアし、病気にならない身体づくりを提供する【エイジングケアサロン】をコンセプトとしながら「美容と健康」の観点より患者の健康意識の増進を図っている。
訪問看護、訪問リハビリテーション事業では石川県、東京都に2拠点を備え、「自立支援」をコンセプトとしながら老人ホーム紹介事業所も運営することで地域住民の健康福祉の増進に貢献している。
以上を踏まえて、同グループの重要なインパクトを下記の4つに特定した。
【重要なインパクト】
- 「健康相談のできる調剤薬局展開を中心とした地域健康福祉の増進」
- 「医薬品廃棄物発生の抑制」
- 「エコカー導入による環境負荷低減」
- 「地域医療を支える薬剤師等の育成」
インパクトニーズの確認
同グループ売上の大半は日本国内におけるものであり、国内におけるSDGインデックス&ダッシュボードを参照し、そのインパクトニーズと同グループのインパクトとの関係性を確認した。
本PIFにおいて特定したインパクトに対応するSDGsのゴールは、以下の5点である。
- 「 3:すべての人に健康と福祉を」
- 「 8:働きがいも経済成長も」
- 「 9:産業と技術革新の基盤をつくろう」
- 「12:つくる責任つかう責任」
- 「13:気候変動に具体的な対策を」
国内におけるSDGダッシュボード上では、「9」に関しては「達成に近づいている」とされているものの。「12」、「13」に関しては「大きな課題が残る」、「8」に関しては「重要な課題が残る」、「3」に関しては「課題が残る」とされており、同グループにおける「健康相談のできる調剤薬局展開を中心とした地域健康福祉の増進」への取り組み、「医薬品廃棄物発生の抑制」への取り組み、「エコカー導入による環境負荷低減」への取り組み、「地域医療を支える薬剤師等の育成」への取り組みなどが、日本国内におけるインパクトニーズと一定の関係性があることを確認した。
4. KPIの設定
特定したインパクトの発現状況を今後も継続的に測定可能なものとするため、先に特定したインパクトに対し、インパクトの種類、インパクトカテゴリ、関連するSDGs、内容・対応方針および目標とKPIを整理、設定する。
■健康相談のできる調剤薬局展開を中心とした地域健康福祉の増進
■医薬品廃棄物発生の抑制
■エコカー導入による環境負荷低減
■地域医療を支える薬剤師等の育成
5.モニタリング(1) 同グループにおけるインパクトの管理体制
(1) 同グループにおけるインパクトの管理体制
同グループでは、曽我社長を中心に自社業務の棚卸を行い、本PIFにおけるインパクトの特定、並びにKPIの設定を行った。
今後については、以下の体制を中心とした同グループプロジェクトチームが柱となってSDGsの推進、本PIFで設定したKPIの進捗管理を行っていく方針である。
【モニタリング体制】 統括責任者 | 代表取締役 | 曽我 望武 |
(2) 当金庫によるモニタリング
本PIFで設定したKPIおよび進捗状況については、同グループと岐阜信用金庫の担当者が定期的な場を設けて情報共有する。情報共有については、少なくとも年に1回実施することに加え、日々の情報交換や営業活動を通じて実施していく。
(3) モニタリング期間
下記の通り融資返済期限と同一期間にて定める。 モニタリング期間 (返済期限) |
5年間 (2029年9月25日) |